第9章 偽りの許嫁
「本当に、大っ嫌い……!」
「本当に、お前は可愛いな」
「嘘ばっかり言って……っ。もういいです!」
噛み合わない会話から逃げ出すために、私は背を向けて一心にお団子を食べた。
「むくれて団子を食う様子も、なかなかに可愛いぞ。どれ、ぷっくりふくらんだ頬袋をつついてみよう」
「っ、やめてください……!」
くくく…と鈴を転がすような笑みが、耳をくすぐる。
(こんなふうにからかって触れるのも、嘘の噂を補強するためなのかな……)
悔しくて腹が立って仕方がない。
なのに嫌いになりきれないのは、この甘い声と眼差しのせいだ。