第2章 Kiss her hand
「刀をおさめてくれ。茜に免じてな」
「し、しかし!秀吉様!」
「処遇をお決めになるのは信長様だ。それまで、蘭丸の身柄は俺が預かる」
「……はっ」
憮然とした様子で家臣が去ると、私はようやく広げていた両手を下ろした。
私の後ろに隠れたまま、震える蘭丸さんに目をやる。
「お姉さん、ありがとう! ほんとのほんとに、ありがとう……!」
「ううん、私は何も。お礼なら秀吉さんに……。それより…、大丈夫?怖かった、よね?」
女の子の様な華奢な背中をさすって、震えを和らげてあげる。
よしよし、となだめる様にそっと小さな身体を抱きしめると、蘭丸さんの震えが止まった。
「俺からも礼を言う、蘭丸を庇ってくれて助かった。」
私を真っすぐに見据えたあと、秀吉さんは深々と頭を下げた。
「や、やめて、秀吉さん……! どうか顔を上げて」
(私が勝手にやったことなんだから…。それに……私は……)