第2章 Kiss her hand
「この恥知らずめ、成敗いたす!」
「待って、お願い!」
(光秀・秀吉)「!?」
(今度は何!?)
ひとりの武士が刀を抜き放つのが視界の端に映った直後、見知らぬ男の子が転がるように走ってきて、私の背中にサッと隠れた。
「お姉さん、助けて!」
(この子、誰……!?)
「これはこれは……まさかのご帰還だな」
「蘭丸、無事だったのか……!?」
(蘭丸って……もしかして、あの森蘭丸?)
震えている男の子を、肩越しに二度見してしまう。
(確か、織田信長の小姓で…美少年。
本能寺の変で信長様と一緒に死ぬって、何かで読んだ気がする。)
「茜様、おどきください。不届き者を庇い立てしてはなりません!」
「いえ、庇ってるわけでは……」
(突然盾にされただけなんですが……!)
「こやつは火の手の上がった本能寺で信長様を見捨てて逃げた裏切り者! 死して償え、蘭丸!」
(死……)
ドクンッ…
と、その言葉を聞いて、私の心臓が嫌な音を立てる。
みるみる全身から血の気が引いていくのがわかった。