第2章 Kiss her hand
「な、何するんですか…!?」
「あの時の礼を、と思ってな」
「お礼になってません…!」
「それは失礼。」
微笑を崩さず、光秀さんは何事もなかったように歩き出す。
(な…何を…したかったんだろう?揶揄われたのかな?)
飄々とした光秀さんの態度に戸惑いながら、私も自室向かって再び歩き出した。
「茜。今日の料理もお前が作ったのか?」
「秀吉さん。」
いつの間にか隣にやって来た、秀吉さんに声をかけられ並んで歩く。
「お前は料理上手だなぁ。舞とは大違いだ。」
「舞ちゃんはお針子として、素晴らしい仕事してるじゃないですか。あんな素敵な羽織りを縫えるなんて凄いです。」
「まぁ、それもそうだが。あいつは、変な髪形したり安土の姫っていう、自覚が足りないんだよな。」
「でも、そこが舞ちゃんの良いところでしょう?舞ちゃんが居るだけで、明るくなるし。私は、舞ちゃんのように振る舞えないし、料理しかできませんから。秀吉さんだってそう思ってるでしょ?」
(秀吉さんは、本当に舞ちゃんのこと可愛いんだろうな)
秀吉さんの舞ちゃんへの態度を見てると、兄弟愛の様な暖かい愛情が伝わってくる。
ふふふ、と私が含み笑いをすると、秀吉さんは少し照れたように目を逸らした。