第2章 Kiss her hand
私が手伝い、作った料理は次々と広間に運ばれて行く。
広間で待つのは錚々たる面々の大名たち。
その大名たちの中にどういうわけか、私も座らされて一緒に食事を取らされていた。
(緊張して、食べた気しないんだよね……)
大名たちが揃う日の夕餉の時間は、この生活にまだ慣れていない私にとって憂鬱な時間だった。
味噌だれの味がいつもより美味しく出来たのか、ご機嫌で広間に向かう政宗さん。
その後ろを重い足取りで歩く私。
政宗さんについて、広間に入ると用意された自分の席についた。
周りを見ればーーー
明智光秀、豊臣秀吉、伊達政宗、徳川家康、石田三成と、歴史上の人物たちが勢揃いで既に着座している。
そして、上座に座るのはこの城の主
織田信長
(何回、見ても見慣れない)
ここに来てから、武将たちと一緒に食事を囲う機会が多いけれど、この目の前の光景があまりに現実離れしていて、本当に起きていることなのかいまだに疑ってしまう。
小さなため息をついて、視線を上げると
信長様の隣にちょこんと座る舞ちゃんが、笑顔で私に手を振る。
その笑顔に少し照れながら、私も小さく手を振り返した。