• テキストサイズ

貴方は月のように 〜イケメン戦国 明智光秀〜

第2章 Kiss her hand




「おう、茜。今日は大根の煮付けか?」


切った大根を出汁で煮付けていると、ひょいっと私の肩越しにいつもの声。


「……政宗さん、近すぎです。」

近すぎる顔をスッと交わし、鍋を見つめる。

「そんなあからさまに避けるなよ。つれないな。」

避けた私を、政宗さんの片方だけの青い瞳が興味深気に弧を描く。

独眼竜政宗、そう呼ばれる歴史上の人物がこんなにも女垂らしとは……
少しばかしの情けなさを感じつつ、私は煮付けたばかりの大根を一つ皿に乗せると、無言で差し出した。


「どれ……」

一国の大名が、台所に来て、素性のわからない女の作った料理を食べる。

(この人、毒味とかしなくていいのかな?)

時代劇でよく見る、毒味役もいるのだけれど、この人は私を信用してるのか、気にせず口に入れるのだ。

「うん。美味い。これに味噌を掛ければ最高の味だな。」

「では、その味噌は政宗さんにお願いしても?」

「おうよ!任せておけ」

味噌だれ作りを頼まれた、政宗さんは手早く襷をかけると張り切って、作業台の前に立った。

政宗さんの後ろ姿にどことなく懐かしさを感じると、その背中にあの人を重ねてしまいそうになって……

(馬鹿みたい……意味のないことして)

頭によぎった思いを掻き消すと、私はそっと目を伏せた。

/ 573ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp