第6章 疑心暗鬼
「グッジョブ幸村」
「珍妙な言葉で煙にまいたつもりか? 逃がさんぞ」
「刀を抜かないでください、 謙信様! 義元、ニコニコして見守ってねーでお前も手伝え!」
「俺はほら、刀を振るより見る派だから」
「やれやれ、いつもの大騒ぎが始まったか」
「ふふ、最近は俺もすっかり慣れたよ。信玄、ここは本当に居心地がいいね。いつまでもこの日々が続いてほしいと願ってしまいそうになるくらい」
謙信たちのやりとりを目を細め和かに眺める義元。
笑みを浮かべてるはずのその瞳には、寂しさが浮かんでいるように信玄には見えた。
「義元……?」
「……何でもないよ」