第6章 疑心暗鬼
「義元、お前も自分のところの家臣たちをなだめておいてくれ」
「そうだね……。大事な用事があるから、それが済んだら話しておくよ」
「戦の伝達事項より大事な用事ってなんだよ」
「踊り子たちを部屋に呼んであるんだ。舞う様子を絵師に描かせようと思ってね」
「あとにしろ! ったく、相変わらずただれた生活してんな……」
義元の武将とは思えない世間離れした感覚に、幸村が呆れたようにため息つけば、その横では佐助に鍛錬に付き合うよう命じる謙信。
「おい佐助、憂さ晴らしに一戦付き合え」
「遠慮しておきます。ちょっと出掛ける用事があるので」
「待て、逃げるな佐助!」
「謙信様、そのへんにしといてください。佐助、今のうちに行け」