第6章 お出かけ
毒は抜けたくせに、鬼避け効果は残っているというなんともご都合のよろしい花である。作ってといてなんだが、よくわからない花だ。
まあ、そんなことはもはやどうでもいい。思った以上の出来栄えに私は大満足なのだ。
そもそもこれをお願いしたのは、双子と佳恵子さん用の着物を作ってもらおうと思ったからである。私と楓は基本的に仕事が忙しく、夜だけでなく、日中もいないことがしばしば。いくら万全の体制を敷いているとはいえ、いつ鬼がやってくるかわからないのが世の常。備えあれば憂いなし。鬼避けはいくつあっても困らないということで、突発的に思いついたのが今回の着物である。
彰「それでは、こちらのお品物は今日お買い上げでよろしいでしょう?」
『えぇ、お願いします。今見ているであろうものも一緒にお願いしますね』
彰「承知致しました。今日お買い上げ頂いたものは、明日お屋敷にお持ちいたしますね。珠希さんと真望さんのお着物はまだですので、出来上がり次第お屋敷の方にお持ちいたします」
『お願いします』
彰子さんはしっかりと頷くと、丁稚に着物と染物を奥座敷へと運ぶように命じた。それと入れ替わるようにして、お茶が運ばれてきた。
彰「どうぞ」
『ありがとうございます。いただきます』
一口口に含むと、玉露の良い香りが口いっぱいに広がる。
(昨日の夜からずっと動きっぱなしだから、体に染み渡るわ.......)
自覚しているよりも体は疲れていたらしい。ようやく一息ついて全身の力が抜けていくのをしっかりと感じた。
彰「お疲れのようですね。昨夜も任務に行かれたとか。お怪我はなされていませんか?」
心配そうにあれこれ見てくる彰子が、佳恵子とまるで同じ行動をするのでつい笑ってしまう。かすり傷程度だと伝え、大したことないように言うと怒られた。
彰「大したことないではありませんよ!小さな傷が大きな怪我に繋がるのです!芳華さんはもう少しご自分の身を大切になさるべきですわ!!」
『は、はい.......っ、すみません.......っ』
彰子さんと佳恵子さん。この2人には昔から逆らえない。過保護の中の過保護とも言うべき2人の圧はとにかく「すごい」の一言に尽きる。心配してくれているのがわかるから大人しく従う、が.......やっぱり怖い。さすが、亭主すら尻に敷く女主人。