第5章 無限列車
数日後
しのぶから、「炭治郎が全集中・常中を会得し、機能回復訓練も無事終わったので今日蝶屋敷を出る」という手紙が届いたので、禰豆子を届けに蝶屋敷へと向かった。
いつもの場所に降りると、カナヲが縁側でコインを眺めてぼーっとしていた。
『カナヲ』
カ「.......っ、芳華様」
珍しいなぁと思いながら声をかけると、ハッとしていつもの笑顔で駆け寄ってきた。
カ「いらっしゃいませ。師範に御用ですか?」
『いや、今日は炭治郎に。今日ここを出るとしのぶから手紙が届いたから、禰豆子を届けにね』
カ「炭治郎……」
炭治郎の言葉に珍しく反応するカナヲ。さっきからずっとコインを握ってるし。これは何かあったな、面白いことが。
『何があったの、炭治郎と』
カ「え」
『さっきからコインをずっと気にしてるし、他に興味のないカナヲが炭治郎の言葉に反応したから。何かあったのでしょう?』
カ「えっと、あの.......」
『別に無理に言わなくてもいいよ。カナヲのことだから、どうしたらいいのかがわからなくなったのでしょう?初めて感じた感情に』
カ「.......っ!!」
どうやら当たりらしい。
やるね、炭治郎。カナヲのこんな表情を見るのは久しぶりだわ。短い付き合いでカナヲから笑顔以外の表情を引き出すなんて。まぁ、あの子天然タラシっぽいところあるしな。何にせよ、いい傾向だわ。
カ「よかったね、カナヲ」
微笑んで頭をポンっと叩くと、ぎこちなく微笑んで頷いた。
『じゃあ、私は行くわ。またね』
カ「あ、あの、芳華様!!」
『ん?』
カ「ま、また稽古を、つけてくれませんか!?」
『.......っ』
驚いた。今までにカナヲは自分から稽古をつけて欲しいとは言ってこなかったから。それはしのぶが相手でも、私相手でも同じ。
ぎゅっと目を閉じて、真っ赤になりながらお願いするカナヲが可愛くて、思わず「くすっ」と笑ってしまった。
炭治郎の影響はすごいね。まるで太陽みたいだよ。
『いつでもおいで!』
カ「っ、はい!!」
いつもとは違う、本当に嬉しそうな笑みで頭を下げるカナヲに手を振り、禰豆子を届けるべく、その場を後にした。