第6章 俺の友達が多分恋をしている件について
「(…宇髄先生の”何”なんだろう。)」
よく”パシリ”に俺を使う宇髄先生は
美術の授業の度にチラチラとちゃんを
何度も何度も確認する。
初めは”まあ流石に先生でも気になるよねぇ。”
なんて思っていたが、たまたま近くで
宇髄先生の音を聞いた時に俺は鳥肌がたった。
尋常じゃない程”優しく”鳴っているその音には
とてつもなく色々の感情が乗りまくっていて
聞いているこっちが壊れてしまいそうになった。
一方ちゃんからは”安心”している
なんとも可愛らしい音が鳴っていて
この2人の関係はいったい何なんだといつも思う。
もし宇髄先生のソレが男女の愛で
ちゃんの安心もそれだとしたら
宇髄先生の反応が怖すぎて話しかけられない。
本当の所は知らないが一つだけ分かる。
チャラいと思われているMr.色男の”特別”は
間違いなく!!”ド派手にド級にくそ重い”!!
めちゃくちゃ俺はそれが怖い。
そりゃ怖いよ!!あんなのと戦えないよ俺!!
「…はぁ…謎だらけだなぁ……。」
色々と考えてみたのだが、
結局の所俺はちゃんの音しか知らない。
確かに感情を読み取るのにこの才能は
とても役にはたつけれど何もソレが全部じゃない。
詰まるところちゃんの
音しか知らない俺は彼女の何も知らない。
謎だらけの可愛い彼女は
いったいぜんたい何者なのだろうか?
いつもなんであんなに苦しそうに嘘をつくのか
その嘘はいったい何なのか
それなのになんであんなに優しい音がするのか
俺は何もわからずにまた遠巻きに笑顔を眺める。
結局俺とちゃんの関係は
他の皆と変わらない。
俺の生ぬるい視線は不快では無いだろうか。
彼女の中身を知ってるから
多分恋をした俺の優しい友達は
きっと彼女にとっても特別なのだろうと
情けない自分がほんの少し嫌いになった。