第3章 俺は何も知らなかった件について
「………ちょっと残念。けど仕方ないか。」
楽しくて少し欲張った自分がいけなかった。
そう思って潔く諦めて自分の家へ向かう。
___ガチャ。とドアを開けるとあたり前に
いつもの見なれた空間が広がっていて
____ふっ。と詰まっていた息と肩の力が抜けた。
「あの髪型似合う人、滅多に居ないのにな。」
何となく手に取った描きかけの絵は
実は玄弥がモデルだったりする。
殆ど抽象画なのでただ1人を除いたら
他の誰かが見ても分からないとは思うが
何となくコレはもう完成しないだろう。
昨日までは景気よく進んでいたのに
何となくそんな事を思うけど
本当にそうなんだろう、きっともう描けない。
「何で自分の怖いものと玄弥を
合わせて書こうと思ったんだろうな私。」
その絵は二股に別れた影になった玄弥が
血塗れの自分を肉として喰らおうとする。
そんな、何とも不気味な絵だった。