第3章 俺は何も知らなかった件について
「よく這い上がった。そこは大人として
本当に偉いと思う。が……家族は別なんだ。
…偏見混じりですまねェが、頼む……。」
俺も昔はそれなりに”やんちゃ”もした
それでも今はこうやって先生何てやっている。
の経歴から考えて
流石に学園長だって入学させるか悩んだはずだ。
それでもココに居るのは紛れもない結果を
残した証拠でもあり同時に覚悟だとも思う。
それを蔑ろにするのは教師としても
大人としても絶対にやっちゃいけない事で
信じてやれない自分がとても情けなく感じる。
「本当に不器用で優しいお兄ちゃんですね。」
の声は本当に耳に残る。
聞いた事の無いほど優しい声で囁いたその顔は
驚くほど綺麗に微笑んでいて
何故か息が___ヒュッ。と詰まる心地がした。
けれどとにかく”伝えたい事”は伝わったらしい。
その顔はもう見たくないと背を向けて
俺は色々な思いを抱えながら酷く近い家に帰った。
その時に感じた風は今も忘れられないほど
異常に優しくそれでいてとても不快だった。