第11章 お前にキスがしたくなった件について。
「不死川先生、コレは、
気持ち…って意味で捉えれば良いんですか?」
少し震えながら何時もの顔で言うに
あの最悪な日を思い出した。
それなのに全く腹が立たないのは
伝わって嬉しいからなのかもしれない。
初めてコイツの胸ぐらを掴んだ時に
俺は何故か何も言えなくなった。
”これ以上責めたくない”なんて
本気で柄でもない事を何故思ったのか
今の俺なら理解が出来る。
いつも決まって当たり前の満点をとるが
生徒として何だかとても気になって
同時に負けたくない何て思って
阿呆みたいに意地になった俺は
毎回普通なら絶対に解けない難しい問題を
小テストの度に1問だけ作っていたんだ。
それを毎回軽くいなしてから
”今回も満点ですか?じゃあ怒れませんね。”
とニヤニヤ伝えてきて俺が負けるのが
少し前までの俺達の唯一の関わりだった。
そんな負け続けの教師と完璧な生徒の
小さな戦いを俺はこっそり楽しんでいたから
近くで見ていたこいつの努力を
無駄にしたくないなんて柄にもなく思ったんだ。