第11章 お前にキスがしたくなった件について。
「(……なにこれ……心臓破裂しそう…。)」
「(…真っ赤じゃねェか。…可愛いなコイツ。)」
真っ赤な顔をして固まる姿が
妙に可愛く見える時点でもう完璧に負けだ。
性欲は排除した筈なのに
単純に触れたくて、何となく抱きしめたくて
ドクン。と胸まで高鳴る始末で
気がついた自分の気持ちや
しっかり自覚してしまった特別に
色んな戸惑いが一気に押し寄せてきた。
「…吸わねェなら消せよ。」
俺がそんな感情と戦っているのに
手に持つだけで唇に近づけない煙草に
異様に腹が立って俺はソレを取り上げた。
驚いた顔とポカンと空いた小ぶり唇に
うっかり俺は目を奪われて
またそれに思考を簡単に乗っ取られた。
「………あ、あの。煙草…まだ………。」
俺は本当になんてマヌケ何だろう。
恐らく、吸わない煙草に腹が立ったのは
自分がコイツに触れられない理由が
この煙草が邪魔だったからなんだと思う。
それを排除してすぐに押し倒して
頬なんて触れてしまい、やっと触れたなど
甘ったるい思考とが焦った時にする
この下手くそな言い訳に目を細めて
お前が強請ったんだろ。なんて
都合のいい自己解釈を実行しようとしている。