第11章 お前にキスがしたくなった件について。
「………俺のでいいなら吸うかァ?」
「…あれ、私と同じ銘柄ですね。…頂きます。」
俺は自分で思ってたよりも随分猿だったらしい。
結局酔っ払って自分で訂正なんかして
我慢も効かずにうっかり手を出してしまった。
そして、少し前まで嫌ってたコイツに対して
煙草の銘柄が同じ。ってだけで少し浮かれて
嫌がらねェ素振りにまた何となく安心した。
「そーいや、宇髄もパーラメントだなァ。」
「天元のはメンソールじゃないですけどね。」
何となく宇髄とは少し違って
俺とは同じ煙草に親近感が沸いた。
会話が普通に出来ているのも
ごくごく自然に事後の行動も同じな事も
恐らくコレが本当にコイツの素なんだろう
いつもより静かで冷たい気だるそうな態度に
気を使う という大人になると当たり前になる
そんな習性は無しでいいかと心地よく感じる。
「最近コレ売ってねェとこ増えたよな。」
何てどうでもいい話なんだろうか。
不意に見つけたとの共通点
煙草の銘柄なんて下らないものなのに
もっと掘り下げたいと思うのは何故なのか。
身体を重ねたせいで距離が近くなったのか
この安心感が気に入ってしまったのか。
とりあえずと宇髄に緩いなんて
俺はもう二度と言えないことだけは確かで
目の前のコイツは俺の事を今どう思って
何を考えているのか少し気になりだした。