第4章 とろける極上ローストビーフ 謙信特製梅肉ソースがけ
それは決して解けることのない愛の呪縛──
「本当に…お前はどこもかしこも”愛らしい”な…」
さっきから何度聞いたことだろう。
飽きもせず繰り返されるこの言葉を。
両腕を後ろ手に縛られた私が纏うのは、手首に巻きつけられた布切れ一枚。
跨(またが)った膝の上から見下ろせば、そこには幾つも刻まれた彼の所有印と、その膨らみの中心に今まさに唇が吸い付くところ…
「っんもぉ……そこばっかり…っ」
ぐずるようにして身を捩れば、おのずと胸を突き出すようになってしまうから、私の『そこ』は謙信様にされたい放題だった。
「あぁっん…」
ちゅぱっ と音を立て離れていく薄い唇から、ころんと小梅のようなそれが現れる。
弄(いじ)られ過ぎて真っ赤になっているところへ、ふうと息を吹きかけられ背筋を震わせた私を、とろりと細められた切れ長の瞳が見上げる。
「お前は案外、縛られるのも好きだったか?」
愉しげに弧を描いた唇から覗く真っ白な牙(きば)が カリッ と噛みついて、牙先でコリコリと転がされれば、それだけで快楽漬けにされた小梅は、私に絶頂を与えるには十分だった。
「ぁんっ、んあっ……っやあぁっ!」
ビクンッと背を反らし、腰から頽(くずお)れていく身体は謙信様がすかさず抱き止めてくれた。
優しく髪を撫でつける大きな手の心地良さにうっとりと目を閉じ、抱き寄せられた胸にもたれかかりながら余韻に浸る。
まだ微かに吐息を震わせる私の顎を指先で掬って、同時に唇を掠め取っていった謙信様を見上げれば、そこには蕩けるような甘い微笑があった。
「まだ胸の花芽にしか触れていなというのに……本当に、お前は──」
後に続く聞き飽きたその台詞は、感嘆の溜め息とともに甘い口づけに変わって降ってきた。
「ん…ぅん…っ…」
ゆっくり味わうように舌を絡ませ合いながら、深まっていく口づけの途中…
その甘さに蕩けてしまう前に、私は謙信様の胸を押し返した。