第7章 婀娜な紅葉に移り香を
【共通ルート】
あでやかに色づいた紅葉(もみじ)が、澄み渡る秋空に映える、ある日のこと──
安土城で、信長様主催の相撲大会が行われた。
身分出自問わず、すべての取り組みを勝ち抜いた者は織田家家臣として取り立てられることになっているため、皆出世の機を逃すまいと、真剣勝負が繰り広げられていた。
信長様をはじめ、織田に仕える名だたる武将たちが総見する中──
全勝を収めたのは、身の丈六尺を優に超える大男だった。
文句無しの見事な勝ちっぷりに、その興奮冷めやらぬうち、織田軍随一の相撲好きである政宗が勝負を挑んだ。
「無礼講だ。本気で来い!」
体格の差で勝負は明らかのように思えたが、政宗の軽快な身のこなしが却(かえ)って体の大きな相手には分が悪いらしく、勝負は互角となり、取り組みは大いに盛り上がった。
しかし、最後には体格の差には敵わず、政宗が土俵際で押し負ける形で勝敗がついた。
──〇〇と並んで観賞していたところへ、取り組みを終えた政宗が諸肌(もろはだ)脱ぎのまま、汗を拭いた手拭いを肩に引っ掛けながらこちらへやってきた。
「光秀、一勝負どうだ?」
「何が悲しくて男同士肌を合わせなければならない……俺が肌を合わせるのは──」
手を伸ばし、華奢な肩を引き寄せる。
「〇〇だけにしておきたい」
「…なっ、光秀さん!何てこと言うんですか──」
突如自分に向いた矛先に驚いて、〇〇は頬を赤らめながら物言いをつけてくる。
それを笑顔で受け流していると、横から無邪気な声がふたりの間に割って入ってきた。