第6章 想ひ想はれ常しへに、夏。
──私たちが境内に着くと同時に、続々と観客が集まってくる。
人混みに押されるように肩を寄せ合って光秀さんと並んで見上げる夜空に、いよいよ花火が乱れ打つ。
次々に打ち上がる大輪の火花と、体の芯まで響くような迫力ある音を聞きながら、興奮が高まっていく。
けれど、鼓膜を揺らすのは花火のそれだけではなくて…
(まだドキドキしてる…)
さっきのは咄嗟に出た苦肉の策だったけれど、今思えば自分でもどうしてあんな大胆なことができたのか信じられない。
(みんなに私のことを紹介してくれるのは嬉しいけど…)
それでも、今日だけはどうしても光秀さんを独り占めしたかった。
(だから、あの場で光秀さんの顔がみんなにバレちゃったらデートどころじゃなくなっちゃうし……それにあの時、片手は繋がれたままで、もう片ほうの手には飴を持ってたから光秀さんの口を塞ぐにはあの状況ではあの方法しかなかったし……)
忙しない鼓動を落ち着かせるため、捲(まく)し立てるように心の中で言い訳していると…
斜め上の方から熱い視線を感じ、嫌な予感がしながらも、花火を見上げたまま目線だけをそちらに向ける。
すると案の定、光秀さんは花火ではなく私を見てにやけていた。
「……なに笑ってるんですか」
「いや…」
(……この顔、絶対、私をからかって楽しんでるよね……さっきはちょっと照れてたくせに…)
そう思うと悔しくなって、少し恥ずかしいけれど、反論できるだけの正当な理由はあると、照れ隠しに強気に出てみた。
「……なんですか。言いたいことがあるならハッキリ言ってください」
「なに、お前の愛らしさを噛み締めていただけだ」
「っ…」
自分から言っておきながら、改めてハッキリ言われるとやっぱり恥ずかしくなって、とても反論などできそうになかった。
「一刻も早くこの可愛い連れ合いを皆に見せてやりたいところだが……それではお前が言うように”でーと”できなくなるからな……今はまだ黙っておくとしよう」
そう言うと、光秀さんは私から夜空へと視線を移した。