第4章 愛しけりゃこそ強とと打て
そのまま手を引かれ光秀さんの胸に倒れ込んだ。
(やっぱり、早く誤解を解いて謝っておくべきだった……!)
そう後悔しながら、さっきから引っ掛かっていたことを今度こそ遮られないよう、勢いよく口にする。
「光秀さんわざと私に謝らせないようにしてますよね?」
「よく気付いたな…」
「どうしてっ…」
「可愛いお前に謝られては許す他ない。それでは……こうして、意地悪できないだろう?」
ちゅっ と手首に口づけられ、続けてこちらに寄越された妖しい流し目に、軽く眩暈を覚えた。
(っ…私に意地悪するために……!?)
「そんなの、ずるっ…!」
ぐい と腰を引き寄せられ、さらに身体が密着する。
「常々忠告しているが……お前は危機感が無さすぎる」
それを聞いて、やっぱり昼間の政宗との出来事を怒っていたんだと思った。
「でも、あれは政宗が怪我してるって…」
「政宗ほどの奴が石に蹴躓いて足を挫くような間抜けな真似をすると思うか?」
言われてみれば確かに政宗のそんな姿は想像できない。
「お前はもう少し人を疑うということを覚えろ…。素直なのはお前の良いところでもあるが、それは時に己の身を危険に晒すことになり兼ねない」
そう指摘されると、過去にも思い当たる節がいくつかあって、それ以上言い訳できなくなる。
黙り込んでしまった私を光秀さんは背後から回した腕の中に閉じ込めて、耳許でからかうように低い声で囁く。
「現に今も素直に手を出したばかりに……こうして俺にいいようにされているだろう?」
拘束された手を持ち上げられ、後頭部あたりで光秀さんの手によってさらに拘束される。
袖が肩まで捲れ上がって、露わになった二の腕の柔いところから脇へと舌先で弄(なぶ)られる。
「…ふぅんっ…」
えもいわれぬ感覚に思わず声を漏らすと、光秀さんがクスリと笑った吐息が脇を擽った。