第4章 21歳組飲み会
21歳組で飲みながら話すだけ。犬飼出ない。
「しっかし、葉瑠の彼氏が犬飼ってのが、いまだに意外なんだよなー」
諏訪がため息をつく。葉瑠が犬飼と付き合っている、と聞いたときは驚いた。年下は予想外だ。しかも犬飼。どの犬飼だ?あの犬飼か?
葉瑠はエンジニアとして、隊員のトリガーをメンテナンスしている。犬飼と話すこともあったろう。
だが、葉瑠は姉さん気質でもなければ、恋愛経験豊富でもない。勝手ながら、付き合うなら、同年代か年上、真面目で優しそうな人、と諏訪は予想していたのだ。犬飼だぜ?チャラそうじゃね?知らないけど。
突然、風間が身を乗り出して言った。
「年下で高校生だぞ。ちゃんと面倒見ているのか?」
「えっ」
「面倒見るって……隊の後輩じゃないんだし」
寺島が苦笑する。風間はなおも続けた。
「高校生は未成年なんだぞ。わかっているのか」
「おまえ、だいぶ酔ったな」
「なんだと木崎、俺は酔っていない」
「いやー。酔ってるよぉ」
葉瑠、おまえもだ。と木崎は心中で独りごちた。語尾が伸びるのは、葉瑠が酔った証拠だ。
「葉瑠、俺はお前を心配しているんだ。どうして犬飼なんだ?本当に犬飼でいいのか?」
「犬飼くんが好きなんですぅ」
よし、リア充爆発しろ。諏訪はとりあえず小さく呟いた。風間も葉瑠に甘い。結局心配していたのは葉瑠の方だったらしい。
「言うようになったなあ。この前は自信なさげだったのに」
満足そうに言うのは寺島である。
葉瑠がお手洗いへ行き、少しして、木崎が言った。そういえば
「葉瑠が攻撃手辞めて2年経ったか」
「隊員の中には、葉瑠が攻撃手だったと知らないやつもいるんだろうな」
「戦闘員に戻ればいい。俺は戦いたい」
「まあそう言うなよ、風間。俺も葉瑠も元気にエンジニアやってるよ」
「二人とも、いい弧月使いだったじゃないか。辞めていく同期も多かったが、おまえたちが残ってくれて良かったと思っているぞ。でもやはり、戦いたい。まず葉瑠は戦う姿勢が……」
「酔ってる風間は、饒舌だなー」
「酔ってる風間は、好戦的だなー」
「酔ってる風間は、黙ろうなー。ほら飲め」
今日も夜は更けていく。