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【ワールドトリガー】犬飼澄晴 短編集

第30章 その飲み会の終わり


諏訪さんに呼ばれて、言われたとおりの店に入る。うわあ酒臭い。そこには諏訪さん、風間さん、玉狛の木崎さんに、エンジニアの寺島さんと、机に突っ伏して眠る葉瑠がいた。

「よう、犬飼。来たな」

「葉瑠、よくこんな感じで寝るんですか?」

「いや、ほとんど無いよ(『最近は』だけどあえて言わないでおこう)」

顔の赤くなった寺島さんの横で、諏訪さんが「犬飼も大学生かー!頼りになる彼氏様のお出ましだぞ!」とか言って起こしているが、葉瑠は起きそうにない。

「……犬飼、大人っぽくなったな」

横からポツリと話しかけてきたのは風間さん。この人も結構な量飲んだのかな。いつもより雰囲気がフワフワしてる。

「そうですか?」

風間さんは頷いてからしばらく俯いていたが、次に顔を上げたときは真っ直ぐ凛とした目で俺を見て言った。

「葉瑠は、大切な同期なんだ。これからも、よろしく頼む」










遅い時間に潰れた彼女を背負って歩く、なんてことをしてる自分は、もう高校生じゃないんだと実感した。

年齢は関係無い。好きだから付き合った。そう自信を持って言えるけど、年の差があるのも、また事実。
付き合ったとき、彼女は既に大学生だったので、また一つ追いつけたと思うと嬉しい。

「んぅ。……澄晴くん?」

「葉瑠、飲み過ぎたんだって?諏訪さんに呼ばれたよ」

「え、ごめん!ごめんなさい!降りるっ」

「いいから、暴れないで。もう家に着くし」

「……ごめんね。……迎えにきてくれてありがとう」

「どういたしまして」

葉瑠が後ろからぎゅっと抱きついてきた。首もとに髪が触れてくすぐったい。それから、ふと感じた違和感。いつもと違う、酒の匂い。そこで気づいた。今まで彼女は、俺の前で酒を飲んだことがなかったんだ。
葉瑠は大人で、俺は子ども。さっき一つ追いつけたと思ったばかりなのに、またどうしようもない差を意識してしまった。ちくしょー。

「俺が20歳になったら、美味しいお酒飲める店、連れてってね」

葉瑠はクスクス笑って言った。

「うん。楽しみだなあ」


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