第25章 ラウンジにて
犬飼出ません。
今思えば、寝不足でテンションがちょっとおかしかった。
「葉瑠さんは、寂しくなったりしないの?」
「寂しい?」
徹夜開けの早朝のラウンジ。たまたま私と望ちゃんの二人だけだったので、一緒に朝食を取ることにした。望ちゃんは夜間の防衛任務開けだ。
「ほら、葉瑠さんは大学生でエンジニア、犬飼くんは高校生で隊員、普段関わる人が違うでしょう?」
「確かに、犬飼くんが同学年の子達と話してるときは、その輪の中に入れないかな。でも、うーん。寂しいと思うこともあるけど、平気なんだよ」
「どうして?」
彼は、年齢幅広く男女関係なくコミュニケーションが取れる人だから、前はそれで不安になることもあった。けれど最近は
「……二人でいるときに、特別だなって思えるから」
自分を見てくれるときの目が優しい。目は口ほどにものを言う、というがまさにその通りで。優しくて綺麗なそれを見ると、愛しさが込み上げてくる。会いたいなあ。あの柔らかい髪に触れたい。徹夜開けのせいか、いつもより恋しい。
「特大の惚気をもらっちゃったわね。ラブラブでうらやましい~」
その感じだと、心配無さそうだけど。望ちゃんは笑いながら言った。
「じゃあ、もしもの話ね。犬飼くんが浮気したらどうする?」
何でも、最近友達と盛り上がった話題らしい。浮気されたらどう報復するか。女子は時に容赦ない話題で盛り上がるものだ。
「考えたこともなかったな。うーん……」
浮気。報復。どうするだろう。想像つかないけれど、想像してみる。報復というのだから、自分の怒りがそうとうなものだと仮定して、その仕返しとして最大限やれること……あ、思い付いた。
「訓練室で切り刻んでみようか。彼のトリガーは先に弄っておいて、弾が出ないようにしておくの。痛覚オンにするかはその時の怒り次第で」
「あら!無邪気にえげつない!ふふっ。そういうところ大好きよ。元アタッカーのエンジニアは敵に回しちゃだめね」
うふふ。あはは。
望ちゃんはなんて答えたの?もちろんボーダーの人なら蜂の巣よ。
ここに他の人がいなくて良かったね。本当にね。
そんなとある早朝のお話。