第24章 君にうち着せ見まく欲り
「これはなーに?」
「なっ!!??なんで」
「送られてきたよ」
「誰から?」
「ひみつ」
「そんなあ!」
澄晴くんの端末には、プリキュ○姿の私が表示されていた。先日のアフトクラトルによる大規模侵攻で、トリガーを同僚にいじられていたのに気づかなかったせいで、不本意(強調)にも換装してしまったアレだ。
「俺、知らなかったなー。こんなことがあったなんて」
「これはその、同僚が勝手にトリガーを弄ってて……」
そうじゃなくて。こちらの言葉を打ち切って目を細める。
「何で俺に言わなかったの」
これは怒っている?気温が2度くらい下がった気がする。
「いきなり送られてきて、画像見た俺の気持ちわかる?わかるわけないよねぇ」
怖い!目が怖い!
「言えよ」
口も怖かったー!!!
「ご、ごめんなさい。まさか撮られてるなんて思わなくて、口止めしたし、同僚にはもうやるなって言ったし、なかったことにしようと思ったの」
「でも、こうして送られてきたじゃん。俺、ショックだったな」
ショボンとした澄晴くんは犬みたいだ。今にもしょげた耳と尻尾が見えそう。ただただ申し訳なくなってきて、オロオロする。
「ごめんなさい。本当にごめんね」
「ねえ。俺のために、一個言うこと聞いてくれる?」
「もちろん!私にできることなら何でも。だから、元気だして」
「そう。じゃあ、うちの制服着て」
「……は?」
澄晴くんはニヤリと笑っている。元気になったようだ。まて、そうじゃない。
「葉瑠はうちのOGじゃん。この前、制服取ってあるの見つけた。それ着て」
確かに、何となくまだ捨てられなくて、制服はクローゼットに入っている。大学の友人と、ふざけて制服を着て遊んだこともある。いや、そうではなくて
あれ?もしかして、私、嵌められた?
「言うこと聞いてくれるんだろ?」
「……へんたい?」
「そんな俺が好きなのは誰だよ。葉瑠こそ、いったい何を想像したの?」
へ ん た い ?
首を傾げて上目遣いしてきた。カッと顔が赤く染まる。
「う……そんな私が好きなのは誰よ」
「俺だね。だからはい、着てね」
やられた。初めから、彼の思惑通りだったのだ。
韓衣君にうち着せ見まく欲り恋ひぞ暮らしし雨の降る日を(万葉集2682)