第19章 継ぎて見まくの欲しき君かも
「今年もランク戦が始まりますねえ」
「始まりますねえ」
今日はコタツで温かい緑茶とみかん、というまったりスタイルである。今年もB級ランク戦が始まる時期になった。
「楽しみだなあ。……うん、楽しみだなあ」
「そう?じゃあ格好いいところ見せなきゃね」
そうは言うけど、実際、私のために特別良いとこ見せる!ってことはないんだろうなあ。二宮隊の犬飼澄晴はチームの一員としての役割を淡々とこなしていくんだろう。
そこが格好いいんですけども!
「うん。きっちりチームの仕事してるところが格好良くて、大好きだよ」
澄晴くんは、少し目を見開いてこっちを見る。
「なんか、前も思ったことあるんだけど、葉瑠がランク戦の話してるのを聞いてるとさ、二宮隊のファンみたい。つまり」
俺の恋人だから、っていうより、ただのファン。
「そうでしょうとも。私、付き合うずっと前から、それこそ結成時から二宮隊をチェックしてたんだもの」
「え。……その、葉瑠って二宮さんと仲良いよね。それでチェックしてた?……てかさ、もしかして付き合ってたとか、そういう雰囲気だったことがあるなんてことは」
視野が広くて冷静な澄晴くんにしては、珍しい。ちょっと慌ててる?可愛い。
「ふふっ、ないよー。戦闘員同士、前からお互い知ってたけど、二宮が大学生になって、授業が被ってから会話が増えた程度の関係だもの」
自由選択の授業で被ることが多いから、趣味は似ているのかもしれない。でも、よく知らない。
「あのね。私、数年前アタッカーだったときに、澄晴くんを助けたことがあるって話したじゃない?」
澄晴くんは当時一般人で、記憶封印してるから、覚えてないけど。
「その時、お礼に花をくれた可愛い男の子が、しばらくして宣言通りボーダーに入隊したものだから、ずっと様子が気になってチェックしてたんだよ」
「ああ、なるほど」
「二宮隊が結成されて、トリガーセット構成の相談に乗ったときは、ニヤニヤしてないか心配だったんだから」
「記憶のない俺としては、そこが初対面だからね」
「でしょう?」
「ねえ。……そのときは、その……俺に恋愛感情は無かった?」
今日の澄晴くんは、またもや珍しい。普段言い淀むことは少ないのに。