• テキストサイズ

【ワールドトリガー】犬飼澄晴 短編集

第15章 二人見ませば


それから、少し買い物をして、空港内のレストランで夜ご飯。ここでも、飛行機がよく見える場所を選んだ。

「さっきツリーで撮った写真、送ってね」

「了解」

「それから、これは私からのクリスマスプレゼントです!」

やったー、と澄晴くんは大きな箱を受け取り、包装紙を開いていき、そして吹き出した。

「フハっ。待って待って!葉瑠、俺を甘やかし過ぎでしょ。これ、彼女からのプレゼントっていうか、サンタさんみたいだ」

中身は、新発売の飛行機の模型。今日の空港で単独行動しているときに買った。色気の欠片もないのは承知の上だ。だって空港に来たんだもの。プレゼントしたくなるじゃない。彼はまだ笑っている。ツボに入ったらしい。目にはうっすら涙まで見える。

「ありがとう、葉瑠。……あのさ」

「なあに?」

「これ、俺からクリスマスプレゼント」

小さい箱だ。開けて目を見開く。中にはペアリングが入っていた。

「俺はまだ学校ではつけられないけど、それも卒業までだし。葉瑠は大学でも、ボーダーでもつけていられるだろ?」

「うん」

「それで、葉瑠に近寄る男を牽制できたらなと思って」

「うん?」

「この前、大学で迫られてたって、二宮さんが言ってた」

澄晴くんには言うなって言ったのに。二宮め。

「……迫られた、ってわけじゃなくて、声掛けられただけで。すぐに断ったよ」

「うん。でも俺はいつも一緒に居られるわけじゃないから。外から見てわかるものを贈りたかったんだ」

口元が緩む。とっさに下を向いたけれど、澄晴くんはわかっているだろう。

「ありがとう」

お互い、指輪を右手の薬指につけることに決めて、早速つけてみると

「ねえ、サイズがぴったりなんだけど」

「でしょ!葉瑠が寝てるときに測ったんだ」

「え、気づかなかった……」

澄晴くんが満足そうに微笑んだ。





帰り道、手を繋ぎながら、行くときには無かった小さな硬い感触に、心がくすぐったくなって、幸せが込み上げた。








わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪のうれしからまし(万葉集1658)
/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp