第15章 二人見ませば
今年は、クリスマスの少し前に遠征部隊が帰還予定だから、きっとエンジニアは年末まで本部に缶詰めになるはずだ。それでも、恋人とのクリスマスを楽しみたいと思うのは21歳女性として普通でしょう?
そんなわけで12月の半ば、今日は澄晴くんとクリスマスデートだ。
「今日は来れて良かった!ついこの前まで、イレギュラーゲートは発生するし、ラッド駆除はあるしで、今日本当に出かけられるか心配だったよ」
「そういえば、葉瑠もラッド駆除したんだって?」
「そうだよ。出れる人は総動員だったからね。夜担当だったら、昼担当の澄晴くんとはすれ違いだったね」
「なるほど、だから会えなかったんだ。じゃあ、そろそろ行こうか」
澄晴くんはこちらに笑いかけ、私の手に指を絡めて繋ぐと、それを自身のコートのポケットに入れて、歩きだした。
お互い他愛ない話をしながら電車に乗る。三門市を出るのは久しぶりだ。
「ねえ、本当にここで良かったの?」
「もちろん!澄晴くん、好きでしょう?」
「そりゃ、好きだけどさ」
着いたのは空港だ。
「空港も、クリスマスイベントやってるんだよ。なんと!大きなクリスマスツリーが3つもあるんだって。飾り付けも全部違うんだって」
三門のイルミネーションもいいけど、見たことがあるし、知り合いに会う可能性も高い。せっかくだから遠出しようと思って調べたら、思いの外、空港が面白そうだったのだ。
「そうなんだ。全部見る?」
「見る!行こう!」
「ノリノリで良かった。行こう!」
それから、空港を端から端まで歩いてクリスマスツリーを堪能し、そのあと屋上に来て休憩した。といっても、休憩するのは私で、澄晴くんにはお楽しみ時間のはずだ。彼は次々と飛び立つ飛行機から目を離さない。
二宮隊の隊室には、飛行機の模型が置いてある。それが澄晴くんのものだと聞いて、本物を見るときはどんな顔するんだろうと思っていた。予想通り、乗り物大好きな男の子の顔をしていて、その顔を隣で見られるのが、嬉しい。
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