第2章 ここだもさわく鳥
休憩時間。気分転換にラウンジに来たが、放課後の時間帯で、学生の隊員で混んでいる。席は空いているだろうか。
「へえーそうなんだ!」
犬飼の声が聞こえて、足を止める。
すぐ近く、柱を挟んで向こう側の席で、話しているようだ。3~4人の女の子の声もする。オペレーターの子たちだろうか?
キャハハと可愛い笑い声がする。
犬飼くん、コミュ力高いんだよなあ。
犬飼くんは女の子と話すのが上手だ。学校でも沢山の女の子がいて、仲良くしているだろうに。
どうして3つも年上の私と付き合っているのだろう。
疲れのせいか、マイナス思考になる。
葉瑠と彼らの席の間には、大きな柱があるから、お互いが見えない。彼らは葉瑠に気付いていない。葉瑠はそのまま、聞き耳を立てた。
「やっぱり年上の彼氏がいいなあ」
「なんで?私は同い年がいいけどな。それに、あんた、この前まで彼氏、隣のクラスの人だったでしょ」
ちょうど、話題は付き合う人の年齢についてらしい。
「うん。それで思ったんだけど、同い年の男子は、子どもっぽいのよね」
「そういえば、犬飼は年上の彼女だよね。付き合ったきっかけはなんだったの?」
「えー秘密」
「やっぱり年上が良かったの?」
「ハハっ。違うよ」
「葉瑠さんが、好きなんだって」
心拍数が跳ね上がった。顔が赤くなったのがわかる。
バレないように。バレないように。
「キャーキャー」と女子が盛り上がる中、葉瑠はこそこそとラウンジを離れ、そこから走って逃げた。
み吉野の象山の際の木末にはここだもさわく鳥の声かも(万葉集923)