第13章 命残さむ
「んー。ありがとう。それから、もう一つやりたいことがあってさ……」
犬飼くんは私との距離を一気に詰めると、片腕でぎゅっと抱きしめた。
ドキっとしたその瞬間、胸に固いものが当たる感覚。彼の口角が上がる。そして
『戦闘体活動限界』
無機質なアナウンス。
「……な!?」
な に を し た ?
「ごめんね。でも、どうしても一回は、葉瑠さんの心臓を撃ち抜いてみたくてさ」
「なんじゃそりゃー!!!」
思わず頭を抱えて座り込んだ。何なの?どういうことなの?犬飼くんの意図にも混乱したけど、でもそれより……
何の抵抗もしなかった私(アタッカー)ってどうなの!!??
「……犬飼くん、勝負しよう!今度は私が君の心臓刺してあげるよ」
じゃなきゃ気が済まない!ブランクとか、もう関係無い!
犬飼くんはキョトンとして、そして吹き出した。
「いいよ。やろう (……ドン引かれてもしょうがないと思ってやったのに予想外の反応。これが諏訪さんの言ってた猪突猛進型の葉瑠さんね)」
おまけ
数日前
諏訪「偶々見たんだよ。影浦が『俺はアタッカーの葉瑠さんとランク戦したことがある』って言ったときの犬飼の一瞬ひきつった顔」
雷蔵「何それ、犬飼もかわいいとこあるじゃん。せっかくだから、あの時の葉瑠を見せてやるかー」
我が背子が帰り来まさむ時のため命残さむ忘れたまふな(万葉集3774)