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さくら

第6章 慈しみ



マダラ「いつの日か、お前の笑顔に惹かれていった。

 ヒカクを失っても弱くなることなく強く自分を変えていこうとする芯が、

俺にはお前が美しく見えて仕方がなかった。」


 …そう、友が忘れていった荷物をただ預かっていただけに過ぎなかったんだ。

 男と偽るも、生きる事は決してあきらめない。 

 ヒカクを失って狂う事も、弱くなることもない。

 逆に強く、女としての弱さを、強さへと変えていった。


 女は自分の中では荷物になる面倒くさいものとしか感じていなかった。

 その俺がこうも興味を持つ相手が出来ることに当初は驚いた。
 

 イズナが死の淵をさまよい、雪華と二人で施術をしていた後、あいつが発した言葉は今でも忘れられない。

 記憶がこびりついている。

きれいごとと思ったが、話す雪華の顔が、微笑む優しい顔が、俺を納得させた。 

 その時からだろう。

 俺があいつを、女だと再確認したのは。


 守りたい、失いたくない、笑顔でいてほしい。

 そう思いが募るようになった。




マダラ「お前がヒカクを忘れられないのならそれでもいい。

 
 俺は、お前が好きだ。」



 少しストレートに思いを伝え過ぎただろうか。

 けれどこのうちはマダラに嘘偽りも迷いもいらない。
 


 思いを伝え、握っていた手を今一度強く握りなおす。

 顔を見れば、頬を真っ赤に染めて、涙を流していた。


 そして、俺の愛する笑顔だった。



マダラ「なぜ泣いている?」



 瞳から頬を伝う涙を反対の手で拭い、問いかける。


 すると、しゃくりながらも、懸命に何かを伝えようとする雪華に愛おしさが一層募った。



雪華「、うれ、、しぐてっ、はじめ、て、誰かから、好きだなんて、言われたから、っ、」



 そうか、こいつは愛を知らずに育ったも同然だったのか。

 今思い返せば,こいつの家の主、うちはトウキは愛を与えない非情な異常者。

このご時世そんな親など多くいてもあいつだけは格が違うとわかっていた。

そんな男の下に生まれたこいつは不幸だっただろう。 
 
 愛を、あたえられなかったのだから。
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