第20章 冨岡義勇
「ごめん、別れよう」
「え…?」
それはいつものデートの帰りだった。
家の前まで送ってくれた彼が停めた車の中で唐突に言われた。
私は理解が出来なくて、世界が一瞬止まったようだ。
「なんで、どうして…」
「沙織のことは好きだったんだ、でも…俺とセックスするとき、いっつもどこか上の空でマグロだし…」
マグロ。
言われてみればそうだったのかもしれない。
彼とは身体の相性は悪かったのか全く気持ちよくはなかったのだ。
「でも、私…まだ好きだよ…」
「俺はそうじゃなくなったんだ、じゃあな」
「きゃ!」
半強制的に車から降ろされ、彼は助手席の扉を力強く閉めると、すぐに走り去ってしまった。
「えぇ…うそでしょ…」