第17章 【下弦の伍】累
婚約させられた理由は簡単、脅しだった。
養父の財布を豊かにするために、地主と婚約させられた。
しなければ私の思い出の家を燃やすと言われた。
苦い思いだけが胸を重くしていく。
知らぬ間に私の目から涙が流れていた。
「じゃあどうしてそんな風に君は泣くの?帰りたいから?あの家に」
「ちがう…帰りたくなんか、ない…」
目の前にやっと見つけた愛を手放したくないのだ。
愛してもらえる、やっとやっとなのに
「じゃあずっとここにいなよ。何が不安なの?その婚約者殺したらいい?」
「え…?」
「だめ、もう待てない」
肩に床があたり、目の前には天井と累くんの顔だけがある。
「君は僕のこと好きでしょ?その男と僕だったら、僕の方が好きだよね?」