第17章 【下弦の伍】累
ーなんで今、こんなこと思い出して夢に見たんだろ…
あれから月日は経って、私は19歳になっていた。
少しだけ襖を開けてみると、夜空には不思議な白い少年にあった頃と同じ満月が浮かんでいる。
「なにをしているの、早く寝なさい」
後ろを振り返ると、怖い顔をした義母が私を睨みつけていた。
「申し訳ありません…」
「そんな夜更けまで起きているから憲明(のりあき)との間に子供が出来ないのよ」
強い力で襖は閉じられ、義母は自分の寝室へと向かっていっただろう。
私は身体を起こしたまま、もう一度月を見上げた。
ーこんな所…逃げてしまいたい
愛のない政略結婚をした。
愛がないというのは存外辛いもので、まるで自分が家政婦に成り下がったような気持ちになる。