第17章 【下弦の伍】累
累くんは自分の糸を見つめる。
「他にも出来ないの?」
「他かぁ…」
もう一度手を閉じて、累くんは広げる。
するとたわんだ四角形の中に花が糸で描かれていた。
「すごい…累くん、すごいね!」
「おい!この家が怪しいぞ!!」
2人で和んでいたら外から怒号が聞こえてきた。累くんは素早く立ち上がると、窓から外を見てため息をついた。
「はぁ…めんどくさいなぁ」
「どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。すぐに静かになる」
外に向かって手を継ぎ足すと、しゅるしゅるしゅる!と糸が伸びていく音がして、呻き声が聞こえてきた。
「もうこんな時間だったんだね、君も家に帰らないとなんじゃない?」
「あ…」
楽しくて忘れていたが、私は姉とはぐれてしまっていたんだった。
「家はどこか分かるの?」
そう聞かれた私は住所を言うと、累くんは私を肩に抱いて、窓からすごい勢いで飛び出した。