第11章 伊黒小芭内
いつもみたいに完璧にセットされている髪が少し乱れている伊黒さんはとても色っぽかった。
お風呂上がりのほんのりとした暖かさは心地よい反面、私の鼓動をさらに速めた。
「んっ…」
伊黒さんが優しく口付けて、暖かくて柔らかい唇の感覚が触れる。
一瞬触れるだけのキスのあと、私たちは目をそらさずにじっと互いを見つめた。
考えていることは同じだった。
「私…準備は出来てます」
「俺もだ、沙織。ベッドに行こう」
ひょい、と軽々と伊黒さんは私を横抱きにして、寝室へと向かう。
寝室の明かりは豆電球にされていて、とろけたオレンジ色の光が穏やかに灯っていた。
私は優しくベッドの上に下ろされ、その上に伊黒さんが覆いかぶさってきた。
「優しく…してください、あの…初めてなんです…」
大人になってもまだ処女だなんて引かれただろうか。
伊黒さんは目を丸くしたが、優しく口角をあげて、おでこにキスを落としてくれた。