第11章 伊黒小芭内
時間は過ぎ、とうとう夜となっていた。
ーやばい…心臓の音が…
私はどんどん胸の鼓動が高まっていき、今にも死んでしまいそうだった。
「沙織、風呂が沸いたが、行くか?」
ーふ、風呂!
お風呂から上がったらきっとそういうことするよね…
「は、はい、行きます」
私はソファから立ち上がり、伊黒さんの寝室のドアを開けて電気をつけ、自分のカバンから下着やクレンジングオイルを出す。
ゴン、と棚に肘をぶつけ、床に何かが転がった。
「落ちちゃった、戻さないと」
ほこりの1つもない床に転がっていたのは、0.02ミリと文字が印字された小さな箱だった。
ーこ、これは…!!
まだ未開封のその箱は何かというものを認識してからがすごく重圧感を与えた。
「沙織?なにか落ちる音がしたが…」
扉の向こうから伊黒さんが心配する声が聞こえて、私はすぐにそれを棚の上に置き、寝室から出た。