第8章 「The hole」宇髄天元
ー誰にも愛されたことなんて無かった。
「使えんやつだな!!」
私は今日も殴られる。
誰が親からの連絡なしでタバコを買ってくることを悟れるのだろうか。
大体、タバコ屋さんだってすぐそこだし、コンビニも公園を抜ければすぐそこにある。
その汚れたスウェットを着替えればいつだって、自分の好きな時に買いに行けるくせに。
殴られた頬がジンジンと痛みを主張して、赤く腫れていく。
「買ってこい」
父は自分の財布を私に投げつけた。
私の体にあたって床に落ちた財布を拾い上げ、私は靴を履き、家のドアを開けた。
近くの公園には子供たちが笑い声をあげて複数で遊んでいる。
私は幼い頃、そこの公園で遊んだことはない。
物心ついたら親に殴られる日々。
小さい時は私のせいだと思い込んでいたけど、今はなんとも思わなくなってきた。
殴られる度に胸の奥にある大事な何かが抉られていくような感覚だけが残っている。