貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第18章 貴方に出会うそのために
…………
家康は自分の胸にしがみつく、烈の頭に顔を埋め、躑躅ヶ崎で信玄と交わした会話を思い出していた。
「烈を乃々と引き換えに再び、安土へ返してもらいたい。」
烈を迎えに行き、広間で信玄と対峙すると家康は頭を下げた
「おいおい……。お前が俺に頭下げるとはな。」
信玄が面白いものでも見るように、片方だけ口角をあげる。
「……不本意だが……烈は、武田の姫だ。ここは、お前に頭を下げるのが筋だろう。」
「なんだよ、筋って。それなら、安土へ返して貰いたいじゃねぇだろ。」
「………。」
「三河に連れて行ってもいいか、の間違いじゃねぇのか?」
そう言った信玄の顔からは笑みが消え、獣のような鋭い眼差しで家康を見据える。
甲斐の虎の異名を持つその眼光に、家康は怯むことなく、烈と同じ赤銅色の瞳を見返した。