貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第16章 離れない、離さない
「泣かないで。」
肩を震わす私に、家康さんの甘い声が耳を掠める。
その甘い囁きに、押し込んでいた感情が一気に溢れ出た。
「私……家康さんこと、……好きです。」
「……うん。」
「例え……乃々さんのことを好きでも……」
言葉では伝えきれない想いを込めて、家康さんの背中をぎゅっと抱きしめる。
「……うん。……ん?え?乃々?」
私の言葉に家康さんが慌てて、抱きしめていた私を引き離した。
「はい……。乃々さんのこと、今でも……」
「いや、ちょっと待って。確かにそんなことを思った時もあったけど……。今は、乃々には信玄がいるでしょ?」
「でも……」
「あんたね……」
恨みがましいような声で呟き、家康さんが私に目だけ向ける。