貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第16章 離れない、離さない
「–––嬉しかったんだ、ほんとは」
(え……?)
呟くように言った家康さんの顔が、間近で苦しげに歪む。
「あのまま死ぬんだと思った時、あんたが現れて。あんたの顔を見た瞬間、考えるより先に、心が、喜んでた。あんたを危険な目に合わせたくなかったはずなのに……」
背中に回る腕にそっと力が込められ、胸に頭を抱き寄せられる。
胸板が触れて、どくどくと鳴る鼓動が私の肌へじかに伝わった。
(心臓の音、すごい……。今、家康さん…どんな顔、してるんだろう……? )
息が詰まるほど身体じゅうが熱くなって、目を上げる。
思い詰めたようなしかめっつらと、真っ赤に染まる首筋が間近に見えた。
(これって……これって……もしかして…家康さんも、私のこと……?)
よぎった思いに、期待が膨らんで鼓動が痛いくらい跳ね上がる。