貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第12章 私の知らない時間
聞きたくなかったその言葉に、耳を塞ぐことも出来ず心が冷えてゆくなか懸命に平静を装う。
(家康さんは乃々さんのことが好きだったーーー。
だから、躑躅ヶ崎で初めて会った時、家康さんはあんなに優しい顔をしてたんだ…。)
躑躅ヶ崎で初めて会った時の、家康さんが乃々さんを見つめる眼差し
(恥ずかしい……一瞬でも私のため…だなんて思って……)
私の知らない時間に築きあげられた絆。
さっきの家康さんの強い意志を思い出せば、その想いの大きさを思い知らされる。
自らの危険も顧ず、乃々さんを守るために名乗り出た姿を見れば、私にだって分かる……
(家康さんは……きっとまだ……)