貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第11章 恋情
–––城下へ行く約束をしてからしばらく、家康さんが御殿を留守にする日が続いた。
親しくなった家康さんの側近からは、私を狙う間物の調査で忙しい、とだけ聞いていた。
ひとりで弓の稽古を続け、女中さんに頼み込んで始めた掃除や食事作りの手伝いをするうちに、穏やかに時間が過ぎていく。
あの日のように寂しいと思うこともなくなっていた。
(今日はあっちの廊下の雑巾掛けか)
数日後の昼下がり、私は女中さんに雑巾掛けをお願いされ、桶に汲んだ水を運んでいた。