貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第11章 恋情
「それから……これ、家康さんの忘れ物ですか?」
小箱を両手で差し出す。
「あ……あー、それは……」
家康さんが私の手に乗る小箱を見ると、困ったような難しい顔をして受けとった。顎に手をやり何か少し考えそわそわした顔をすると、再びその小箱を私に差し出した。
「え……?」
「–––言っとくけど、深い意味ないから」
差し出された小箱を遠慮気味に受け取り、今度は躊躇うことなく蓋を開ける。
箱の中には、なめらかな輝きを放つ七宝焼きの耳飾りが、ちょこんと入っていた。
(耳飾り……?)
「あのっ、これ…」
「弓の稽古、それなりに頑張ってるし……指南役として、たまには労ってあげる」
私が尋ねるより早く、家康さんが仏頂面で告げた。