貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第8章 不穏な動き
そしてもう一つの苦い記憶が家康の脳裏に浮かんだ。
乃々が信玄にさらわれたあの日のことだ。
なぜ乃々を一人で城下などに行かせたのか。
あの時、自分が付いていれば、乃々が信玄にさらわれることはなかっただろう。
(俺がついていれば…何か変わっていたんだろうか…)
後悔してもしきれなかったあの思い。
「お前だって、それを懸念して烈を送り迎えしてるのであろう?」
光秀の見透かすような瞳が家康を見つめる。
反論することなく、その瞳を家康はただ黙って見返した。