第9章 善意の横槍
目が覚めると、そこはなんとなく見覚えのある所だった。
そうだ、ホテルだ。それで……たしか……
数秒考えて、事の顛末を思い出す。最後に、酷すぎる惨状を見たんだ。とにかくなんとか状況を伝えて、役目を果たせたと感じた瞬間、本当に気が抜けてしまった、のか。
とりあえず上半身を起こす。
「、起きたか」
「先生……私、倒れた?」
「ああ。よっぽど辛かったんだろうな……」
「辛いっていうか……まあそういう事なのかもね……」
水野先生が部屋には居て、ペットボトルのお水を持ってベッドの隣まで来てくれた。急に喉が乾いてきて、それを受け取るなりすぐにゴクゴク喉へと流し込んだ。ふと目線を下げれば、私はホテルのパジャマを着てる。
「あれ、着替えまでしてる」
「赤井さんがFBIの女性を呼んで着替えさせてくれたんだ。妙な心配は要らん」
「そっか。赤井さんは?」
「が見た情報を頼りに早速捜査に取りかかってるそうだ。礼を言ってたぞ」
「ふーん……犯人捕まるといいですね。てか捕まってくれないと困る!私倒れるくらいの仕事したんだから!」
「だな。体調はどうだ?起きれそうか?」
「うーん、多分、大丈夫。かな?」
「まあ大事を取って今夜はホテルで過ごすか」
「あ……今何時!?」
「夜の七時だ」
「えっ!ごめんなさい先生!私ここにいるし、どっか、遊びに行ってきても……いいですよ?」
「がこんな時に呑気に遊びになんて行けんよ……」
私は何時間も眠ってたみたいだ。でもそれよりせっかく海外に来たのに、ほとんど遊べてない!行きたい所、全然行けてない。そういや昨日聞いたドーナツ屋さんにも行けなかったし、零くんへのお土産だってまだ何も買ってない。
そもそも仕事で来てるんだからしょうがないと思うしかない、か。
「私の荷物……スマホは……?」
「ここにある。ほら」
「ありがとうございます」
鞄を受け取り、スマホを確認する。
零くんに朝メッセージを送ったきりになってるけど……変に心配させてないだろうか。気を失って倒れたなんて言わない方がいいだろうな。
「先生、零くんには私が倒れた事言わないで」
「……余計な心配をかけんようにか」
「うん。赤井さんの事もだけどね」
「分かった。言わんでおく」