• テキストサイズ

恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第9章 善意の横槍


自分の部屋でシャワーを浴び、の所へ戻ると、赤井さんは部屋の奥で椅子に座り、静かにベッドの方を見つめていた。


「すみません。のこと、ありがとうございました。赤井さんこそ服、大丈夫ですか?」

「これくらい平気です」

「あの、今回のの仕事はもう終わりですよな」

「ええ」

「でしたらあとは俺だけで大丈夫ですから、気にせず仕事に戻って頂いて結構ですよ」

「いえ、ちゃんとさんに礼を言ってから帰ります……それに彼女に大事な話もひとつあるもので」

「へえ、そりゃまた……どういった話です」

「まあ……彼女は気付いていないと思いますが、俺は日本に住んでいた時に彼女に大変世話になっているんです。その時の礼をまだできていなくてね」

「そんなことが。ん……?いつ頃の話ですかそれは」

「一年以上、前の事です」


嫌な予感が頭の中を過ぎり、思わず顔を顰めてしまった。

“が気付いていない”という点は少々引っ掛かるものの……もしかすると、の言う“あの彼”は、もしかするとこの男だったりするのか?

と男性に何かがあったとするなら、この数年は“あの彼”くらいしか思い当たらない。

だとしたら……少し前までなら飛んで喜んだかもしれないが、今となっては最悪の事態だ。

ただでさえ精神的に不安定な状態のの前に今“あの彼”が現れたら彼女はパニックになってしまうのではないか。

しかもせっかく降谷さんって恋人もできて、上手くいき出したっていうのに……


「まさかとは思いますが、世話になったって……赤井さん……の家にしばらく厄介になったとか、では無いですよね」

「……ご存知なんですか。そのまさかですよ」


巨大な鉛玉に、ゆっくり頭の上から押し潰されるような……ジワジワと事の重大さがのしかかってきた。

どうして今になって……もっと早く出てきてくれれば良かったものを。

の事を考えれば、何も知らないまま、過去の事だけが記憶の片隅にある状態のままが良いだろうか。

知れば彼女はどう思う?ずっと会いたいと思っていた男に会えたとなれば……どうなる?

俺は自分の中で勝手に結論を出した。

もう今のに“あの彼”は必要ない。
/ 184ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp