第9章 善意の横槍
が意識を失いその場に崩れそうになり、咄嗟に水野と赤井は彼女の身体を両脇から支える。
「こりゃ……しばらく起きんな」
「病院へ連れていきましょうか」
「いや……おそらく少し横になっていれば大丈夫です……俺はの主治医でもありますから」
二人がかりでの身体を車に乗せ、滞在中のホテルへ向かう。
「さんは能力を使って倒れることもあるんですか」
「……前にも一度だけありました。今回もおそらく脳にかなりの負担がかかるモノを見たんでしょう……」
ホテルに着き、未だ意識のないの身体を赤井が抱え、水野が荷物を持ち、彼女の部屋のドアを開けて中に入った。
ベッドに寝かせるも、彼女の顔には血の気がない。
「濡れた服を着せたままでは風邪をひくかもしれません」
「ああ……しかしも一応女性だからな、俺達が着替えさせたら目を覚ました時きっと怒るぞ」
「FBIの女性局員を呼びます」
「そうしてもらえますか」
「ドクターも着替えてシャワーも浴びてきては?彼女にはしばらく俺がついていますから」
「そうするか……よろしく頼みます」
水野が部屋を出ていき、赤井はジェイムズへ電話を掛ける。しかしホテルに女性の局員を呼ぶことはなく、先程から得た情報を元に考えられる爆発物の設置箇所、これから犯人確保に向けて取るべき行動、それからが倒れた為しばらく自分は戻れない事を伝えただけだった。
彼は通話を終えると、が横たわるベッドに近付き端に腰掛けた。
の青白い頬にそっと触れ、物憂げに目を細めた後、部屋の中を見回し、バスルームからタオルとナイトウェアを手にして、再びベッド脇へと戻ってきた。
そしてあろうことかの上半身を起こして服を脱がせ出した。下着までは手をかけないものの、湿った肌をタオルで拭い……ナイトウェアを着せたのだった。
着替えも完了すると、彼は雨で湿った服をハンガーに掛けて壁際に吊るした。
部屋の隅の椅子に座って脚を組み、眠ったままの彼女に視線を送るその表情は、どこか切なげにも、優しげにも見える。