第8章 アメリカでの仕事
ドーナツの話をしながらカツ丼を食べ進める赤井さんはなんとなく楽しそうだ。これがプライベートの彼なんだろうか。仕事中は冷徹な雰囲気を辺り一面に撒き散らしてて近寄りがたいけど、今の彼は、普通に素敵な男性に見える。(零くんには絶対言えない)
明日は赤井さんが最も怪しいと踏んでいる現場を見に行く事になっている。もしかしたら、久しぶりに見たくないものを見てしまうかもしれない。そうなってしまったらもうこんな風に楽しく笑って食事する所じゃなくなってしまうから……めいいっぱいこの時間を楽しんだ。
FBI御用達の能力者のおかげで解決出来た難事件の話に夢中になったり、私が能力を使って助けられた人物の中には実は超有名人がいる話とか……
話題が尽きず盛り上がっている中、私のスマホにメッセージが届き(零くんからだった)。ふと時計の表示を見ればもう結構な遅い時間だったので、お開きとなる。
ホテルに帰って寝支度を済ませてベッドに入る。願いが叶うならウチのベッドもこれにしたいくらい……適度にフカフカで、寝心地抜群だ。
これまでの零くんとのメッセージのやり取りを、画面をスクロールしながら眺めていると、何故かぼんやり“あの彼”の事が頭を過ぎった。
ハッキリ意識するのはちょっと久しぶり……つまり、ちゃんと切り替えられてきてるんだろう。
それもこれも……色々、零くんのおかげだ。
すると突然画面が着信中の表示に切り替わり、心臓が小さく弾んだ。画面には“降谷さん”の文字。(最初に電話帳に登録した名前のまま、変えてないのだ)
すぐに出る。
「もしもし!どうしたの?すごいタイミング!ちょうど今零くんの事考えてた!」
「そうなのか。僕もだ……どうだった?仕事は」
「うん、大丈夫だった!何も見なかったし……休憩もしっかり取れたし」
「そうか……一応それだけは聞いておきたくて」
「ありがとうね……あ、そうだ!私のこと、警察の人になんて言ったの?は甘い飲み物が好きだとか言ったりした?」
「……ん?適宜休憩を取りながら仕事を行ってもらうようにっては、前に伝えたけど」
「そうなの?今日休憩中にね、警察の人が甘ーいカフェラテ買ってきてくれてさ。甘いのがいいなんて言ってないのに。ビックリしちゃって……もしかしたら零くんが言ってくれたのかもって」