第2章 恋はまだ始まらない
降谷さんは少し黙り、一瞬気まずそうな顔をしたように思えたけど……すぐに平然とした表情に戻った。
「……ここだけの話ですよ?僕、あの組織の捜査で結構精神的に参ってたんです……それで今は比較的ストレスの少ない仕事に回してもらってて」
「成程……それでしたら、我々の得意分野だ。なっ、」
「そうですね」
水野先生はまさか、さっきの“お膳立て”ってやつをしようとしてるのか。
私まだ「この人と仲良くなりたい」とも言ってないのに……!先生は更に話を進める。
「我々普段は研究室におりますが、俺は精神科医で、は優秀な心理士でもあります」
「へえ……そうでしたか」
「よければお話聞きますよ。勿論秘密は厳守します。警察の方って家族にも言えない秘密を抱えてる方も多いですからね」
「たしかに同僚にも精神科を頼ってる者はいますが……あれって本当に秘密は厳守なんですか?」
「当然です」
「じゃあ……僕も一度お願いしてみようかな」
「是非。一度お話しするだけでも、心持ちは変わりますよ」
先生……これで良くも悪くもまたお抱えの患者が増えるのか。
水野先生って、私が小さい頃は普通のお医者さんだと思ってたんだけど。いつの間にか先生の居る場所は診察室ではなく研究室になってて。(医師から学者になったという事だ)
それでも先生は、昔からの気になる患者だったり(私もその一人か)、興味のある人の診療は今も行うのだ。
先生はどういうつもりで降谷さんを診たがってるのかは分からないけど……あの事件を捜査してたキャリア警察官の心の中、実は私もすごく興味があったりする……
車は空港へ向かう最後の直線道路に差し掛かっていた。
一旦今の話は忘れ、仕事モードに頭を切り替える。
空港に着き、事務局で通行証をもらい。さて、始まりだ。
「僕、予知能力を使う方って初めてお会いしたんですけど……どうやって見るんですか?」
「どうって言われても……集中すると見えるんです。意味分かんないですよね、しかも私は未来が見える訳じゃなくて、人が死ぬのが分かるだけだし」
「ずっとこの力について研究してますが、未だに謎だらけですよ。まあ見ててください。それから……は今からどんどん不機嫌になりますが、いつもの事なのでお気になさらず」