第8章 アメリカでの仕事
「寝ているのか?」
「っ!いえ!起きてます!」
急に車の扉が開き、声がして、飛び起きた。運転席に乗り込んできた赤井さんの手には、コーヒー、かな……三つあるから多分私と先生の分も買ってきてくれたんだろう。
「こっちはさん、こちらはドクターに」
「あ、りがとうございます」「すまないね」
プラスチックの蓋の付いた、温かい紙のカップを受け取る。ほんのり漂ってくる香りはやっぱりコーヒーっぽい。素直に嬉しい。
車のエンジンがかかり、動き出し。
一口啜ってみると、もっと嬉しいことに気付く。これ、甘いカフェラテだ。頭がしんどい時はコレがいいんだよなぁ……赤井さんナイスセレクトだ。
しかし、更に嬉しいことは続く。
しばらく走って車が停まったのは、次の現場だとばかり思っていたら違うみたいで。大木が生い茂る公園だった。
「このまま車内で休んでもいいが、この中はもっと落ち着くぞ。少し歩くが、行くか?」
「いいんですか……?行きたいです」
コーヒーを片手に、三人で公園の中に入った。公園の中には小さな川も流れてて、所々花も咲いてて。めちゃくちゃいい……!
見つけたベンチに先生と腰掛けて、ゆっくりとカフェラテを頂く。ちなみに赤井さんは少し離れた後ろの方で、木の幹にもたれて飲み物のカップを片手に立っている。脚長いな……
「なんか落ち着きますね……あ、先生のは普通のコーヒー?」
「そうだが?のは違うのか?」
「カフェラテです……しかも甘いの。すごくないですか?」
「いい男ってのはサラッとそういう事するんだな」
「ねー……ちょっとビックリしちゃいまいた。疲れた時は甘いのがいいって、私昨日言いましたっけ?」
「いや?あれか、降谷さんが警視庁の人間に言伝したとか」
「あーなるほど。有り得そう。さすが零くん」
自然がいっぱいの公園と、澄んだ薄い水色の空を写真に収めて、また零くんに送った。彼はまだ寝てる時間だろう。
本当にゆったり休憩を取らせてもらい。一向に声を掛けてこない赤井さんにこちらから「もう大丈夫です!」と申し出て、また次の現場へ向かった。
結果、嫌なものを目にすることはなく、今日回る予定だった所は全て見終えて。
ホテルに帰って、先生と今日の仕事内容をまとめ終えた。有難いことに、あまり憂鬱な気分でも無い。